B-9.小町塚瓦経欠片(2点掲載)
伊勢神宮の下宮に近い地に僧西観、遵西の発願で承安四年(1174)に埋納された瓦経です。
瓦経は末法の世に仏法を半永久的に残すため、瓦に経文を書写して経塚に埋納されたものと考えられています。
こうした瓦経の埋納された経塚は西日本を中心に幾つかが知られますが、年代の解るものは十指に満たないと言われ、その中で鳥取の大日出土の瓦経が最も古く(延久三年・1071年)、小町塚が最も時代が降ると言われます。
小町塚瓦経の特徴は、瓦一枚に表裏十五行を書写し、則天文字が使われていることで知られています。書写された内容は誤字脱字が甚だ多いことで知られます。
これらの瓦経は江戸時代には既に破片が民間に出て好事家の手に渡っており、納経の全貌は解っておりません。
しかしならが、今に伝わる小さな欠片をみますと、法華経並びに金剛頂経、大日経、蘇悉地経の台密系の経が見られます。
B-9-1.蘇悉地経欠片
表
裏面
サイズ 縦最大125o、横最大およそ92o、厚さおよそ23o
素雑な文字が多い小町塚瓦経の中にあっては、もっとも優れた文字の個体と思われます。
経典名は蘇悉地経中巻です。
B-9-2.大日経欠片
サイズ 縦最大およそ60o、横最大75o、厚さおよそ21o
焼色が白く、やや粗雑な文字の典型的な小町塚瓦経です。
経典名は大日経ですが、巻数や表裏は判断がつきませんでした。