C-1.観音菩薩坐像(霊木彫刻) 売約済 











台座の後方にも自然木の洞があります。






蓮台に洞による大きな穴があります。像が乗ると見えなくなります。


サイズ 総高 345o、像高 185o

素木一木造、南北朝〜室町時代

堅木(広葉樹)の素木で作られた檀像風の聖観音菩薩坐像です。
作風は南北時代に始まる院派の影響を感じさせる、やや角ばったフォルムの像です。

蓮台には自然木の洞(うろ)と思われる大きな穴が空いています。本来仏像彫刻に適さない堅木で、しかも、洞のある材をどうして用いたのでしょうか?
天災や火事などで失われた寺社の霊木、神木の類を、樹木の特徴をあえて活かして仏像を制作した例は古来より各地に見られます。
ご案内の像も信仰に由来した霊木、神木を用いた彫刻であることが推測されます。

作りは基本的に一木造りで、本体は両腕先のみ別木で接ぎ、台座は蓮台、敷茄子と反花の二分割構造になっています。
保存状態は左手に持った未敷蓮華を欠き、両手の右手の小指を欠き、左手の小指の一部に小さな破損があります。
他に時代の小さな傷みはありますが、目立つ傷みはありません。
尚、光背は当初からなかったようです。

一見民衆仏のように見えますが、その作行は雲泥の差があります。
堅木の一木から仏像を彫りだす技術は相当に高いものがあり、腕の良い仏師の作と解ります。

平安の和様の静的な仏像、鎌倉の写実的で動的な仏像、江戸時代の細工に秀でた華美な仏像とは趣を異にした像です。
サイズ感もよく、ライティングを工夫すると陰影が出来て一層趣が増します。