B-2.装飾法華経断簡 売約済
 
 
  LEDライトで撮影
料紙の表面に艶があるため若干ハレーション気味です。銀の切箔、揉み箔は色調に変化を持たせてあることが判ります。



 スキャナー画像


 極札の表裏


 縦横の界線が直角に交わっている様子が判ります。(金泥で書いた場合は交差する箇所が滲みます。)

 サイズ 縦 295o、横104o ※金箔の縁取りを除く
  
 法華経見寶塔品第十一、平安時代末期〜鎌倉時代初期

 蝋を引いたと見間違うほどの滑らかな雁皮紙に金銀の装飾を施した装飾法華経の断簡五行です。
 界線は截金(切箔)で引かれ、上下の余白は上が主に銀、下が主に金の切箔、揉み箔の装飾が施されています。
 
 贅を尽くした料紙に比べ経文の文字は丁寧な楷書であるものの、とても能書とは言えません。
 平安末期から鎌倉初期の時の貴族社会の間で流行した装飾法華経ですが、発願者自ら筆をとった例は少なく、その多くが専門職の手によるものです。
 ご案内の品は能書とは言えない素人風の文字から見て、発願者自らが筆をとったものと考えることが自然と思います。
 尚、二枚の極札の筆者は「相国寺中正蔵主」(仲芳中正=南北朝、室町初期の僧)となっていますが、実際は更に時代の遡る品です。
 
 保存状態は特に問題個所はありません。銀の装飾部分は裏面に透っており、長い年月が経過したことを示しています。(右下部分で確認)
 時代を経て美しさを増した金銀の装飾、めずしい截金の界線とともに、滑らかな雁皮紙も見どころです。
 豪華な料紙を誂て下手な文字で法華経を書くに至った、当時の支配階級の信仰、思想的背景などが見えてくるようです。

 ※表具はお好みもあるかと思いますので、マクリのままでのお届けとなります。
 ※照明の当て方で見栄えが大きく変わります。工夫してご鑑賞ください。