B-8.神護寺経断簡巻頭一紙 売約済
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巻頭部分の期拡大画像です右下の朱印の切り取り痕をご確認ください。
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布貼りの箱入り
サイズ 本紙 縦248o、横530o、界高193o、界幅およそ18o、表具 縦1120o、横587o ※軸端を含まず
紺紙金字、阿毘達磨大毘婆沙論巻第七、軸装、平安時代末期
平安時代末期、鳥羽天皇が発願し、後白河法皇が神護寺に奉納した紺紙金字一切経で、「神護寺経」と呼ばれる経の一部です。
通常の神護寺経は巻頭に「神護寺」の朱印のあることで知られますが、今回ご案内の品は朱印の部分が切り取られています。(朱印は後印で、古い時代に寺外に出たものには押されていません)
由緒伝来を示す記銘をあえて消すことはよく見られますが、この品がどのような経緯で朱印を除いたかは判っておりません。
ご案内の品は仏典の律・経・論のうちの論にあたる阿毘達磨大毘婆沙論巻第七巻頭部分の一紙28行と最終に1行を+した29行の断簡です。(空行もカウント)深く染めた艶のある紺紙に良質な金泥で書写された文字は、他の紺紙金字経と一線を画す勅願経の名に恥じぬ質の高さを持っています。
書風は端正な楷書で筆先に十分な金泥を含ませて書写されたと見え、文字のカスレは見られません。また、銀の界線も正確に引かれています。
このような点からも他の紺紙金字経とは格の違いを感じさせます。
この経を神護寺経とする根拠ですが、料紙や文字の質感だけでなく、各派で転読に用いる大般若経や法華経、華厳経などの日本仏教各派の根本経典以外の経(律・論を含む)を紺紙金字で単独で書写する例は少なく、ほぼ一切経の一部と考えてよいかと思います。
同時代の紺紙金字一切経は神護寺経のほか荒川経、中尊寺秀衡経が知られますが※、荒川経は真鍮泥で書かれ、料紙の質感なども神護寺経と比べあきらかに劣り、秀衡経は紙の染が浅く文字の磨いていないものが多くいため、区別がつきます。また、民間に流出した巻数の多さからも神護寺経とする有力な根拠となります。
尚、美術館に納められた他の神護寺経とのサイズの比較ですが、根津美術館蔵の仏説九横経他と界高が193oでピッタリ一致します。
保存状態は本紙の上下の余白を中心に虫食いが少々あります。本紙はやや波打っているものの、折れはなく良好な状態です。
表具はとても良好な状態を保っています。
各巻の巻頭は通常の断簡より高く評価されますが、朱印の切り取りを考慮した価格設定に致しました。
写経蒐集の入門者にもお勧めできる品です。
以上、神護寺経とする根拠などをご説明させて頂きました。ご理解を頂ける方のみご検討を頂けますと幸いです。
※田中塊堂氏の説に「大山寺一切経」なる元来紺紙金字の一切経と推測される蔵経があるとされますが、未だ実見したことがありません。
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