鎌倉探訪の記

※記事になっております、「あさらけ」の主人 産形ゆき子さんが2022年2月14日にお亡くなりになられました。
故人をしのんで再掲載いたします。
尚、記事中のお店の情報は2013年当時のものです。

皆さまの失笑を買って以来沈黙を続けていた雑文コーナーの復活です。
今回から鎌倉の隠れた名店や地元住民のみが知る名品を紹介して参ります。
第一回目は鎌倉に根差し、長年地元の人々に愛され続ける骨董店「古美術あさらけ」さんのリポートです。


古美術「あさらけ」訪問の記

鎌倉で骨董店を開いて30余年、産形ゆき子さんのお店 「あさらけ」は現在、鎌倉小町の「ぎゃらりー伊砂」内で営業中です。
因みに、店名のあさらけ、とは浅い甕、浅甕の古語なのだそうです。あさらけ、何とも美しい響きです。


お店は築80年の日本家屋「ぎゃらりー伊砂」さんの中にあります。


築80年の日本家屋に足を踏み入れると、そこに並ぶのは藤原の金銅仏に瓦経、越前の壺、佐波理の器、琥珀の装身具などなど・・・。
特定のジャンルはなくとも、ご自身の美意識で集められた品々には不思議な統一感があります。

 

美意識と聞くと白洲正子風の凄い目力(めぢから)の怖い女店主が現れて、客の方がタジタジなどと云うお店を想像しますが、そんな心配はまったく無用です。
実際は女性客も多く、入門者にも品物の魅力を的確に伝えてくれます。

尚、店主の産形さんは、骨董商の傍ら自らは歌人でもあります。人伝に受賞も多いと聞きますが、本人はそれを語りません。
そんな店主の人柄を慕ってか、お店には 文筆家やデザイナーなど様々な職種の人が集まります。


写真右:店主の産形さんが平成十六年に上梓した歌集『月光菩薩』。現在は絶版ですが、町田市立文学館で読むことが出来ます。

しかし、ご自身は骨董も歌も弟子を持ちません。されど自称弟子や影響を受けた骨董屋は数知れず。
ワタクシ一閑も駆け出しのころはよくお店を訪ねて、白鳳の瓦、翡翠の勾玉、発掘の佐波理など、美しい品々をワクワクしながら眺めたことを懐かしく思い出します。

世界遺産落選どこ吹く風、相変わらず観光客で賑わう古都鎌倉です。
土地柄骨董屋も多く、その多くが繁盛していると聞きますが、上代や平安の品が当たり前に並ぶ店はめっきり少なくなりました。
古く美しいものがお好きな方は鎌倉逍遥の折に「あさらけ」さんを訪ねて、お気に入りに逸品を見つけては如何でしょうか。


左:有名シェフが食材を調達することで知られる「鎌倉市農協連即売所」。同じ建物内には評判のシフォンケーキのお店も!
レンバイ(連売:野菜売り場のこと)の並びにある焼き鳥「秀吉」は地元民御用達。

右:「ぎゃらりー伊砂」の店内。センスのよい和食器、和小物の他、季節には産地直送のカボスや酢橘などの柑橘類も並びます。
こちらで求めた酢橘はこの夏ビールに搾って大いに楽しみました。


2013年12月23日 一閑・細田記